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塗り薬の剤形

 

アトピー治療で、切っても切り離せない塗り薬。
塗り薬を使うとき、薬の成分を考えるのはもちろんですが、薬の剤形(軟膏、クリーム、ローションなど)も選ぶポイントとなります。
「剤形」
という言葉は、あまり聞き慣れない人もいるかもしれません。
剤形とはつまり、薬を使いやすいようにした形のことです。
塗り薬では軟膏、クリーム、ローションなどが剤形の一つです。
皆さんが使っている塗り薬も
「○○軟膏」「△△クリーム」と書いてあると思います。
その部分で剤形が分かり、それぞれに特徴があります。
自分の使っている塗り薬の剤形の特徴を理解して、症状に合った塗り薬を使いましょう。

 

まず、それぞれの剤形の簡単な特徴です。

 

剤形 特徴
軟膏 透明でベタつくが、皮膚刺激性が少なく、蒸発しづらいので、持続性が一番高い。
クリーム 軟膏ほどベタつかず、サラっとした使用感。皮膚刺激性は少しある。伸びはよいが、持続性は弱い。
軟膏とクリームの中間 ソフト軟膏、油性クリーム、ユニバーサルクリームなど。軟膏ほどべたつかず、クリームより持続性がある。良いとこ取りの剤形。
ローション 液体の塗り薬で、塗り広げやすい。軟膏、クリームよりもベタつかない。汗をかく夏場に使用感がよい。また液体のため軟膏やクリームを使いづらい頭皮への使用も多い。蒸発は早く持続性は短い。

 

では細かくみていきます。

 

軟膏

軟膏は、塗り薬の中では一番使用量が多く、基本的な剤形です。
有効成分以外の部分は、保湿剤のページでも紹介した白色ワセリンを主体としたものが多く、使用感も白色ワセリンと近いです。
ねっとりしており、ベタつきはありますが、肌への刺激性が少ない。
そのためかきむしった傷口などにも使用可能。
また蒸発しづらく持続性が高いので、医師も好み、最も使われている剤形です。

 

クリーム

軟膏よりもベタつきが少なく、塗った後はサラっとした使用感なのがクリーム剤です。
軟膏は主に白色ワセリンを使っていることからも分かるように油なのですが、
クリーム剤は水と油を混ぜて乳化させたものを主体としています。
そのため浸透性が高く、効きは良いのですが若干刺激性あります。
ジュクジュクした部位に使うと、しみる、痛みを感じる、といったことがあるため避けましょう。
また、サラっとした使用感のため化粧をする女性の顔にはクリーム剤を選ぶことが多いです。
水で洗い流すことができるのも特徴の一つです。

 

軟膏とクリームの中間

ソフト軟膏、油性クリーム、ユニバーサルクリームなど。
一般的にはこれらもクリーム剤に属するが、分かりやすいよう分けました。
クリームの中でも、油分が多い塗り薬。
そのため水で洗い流せないが、伸びが良く、しみづらい。
保湿力、持続力も高いため、もともと保湿剤であるヒルドイドのソフト軟膏は医師も好んで使います。
使っている方も多いのではないでしょうか。

 

ローション

液体の塗り薬です。薬によって、白い乳液タイプと透明な化粧水タイプがあります。
液体のため塗り広げやすく、使用部位が広い場合は使いやすいです。
ただ、刺激性が出ることもあり、ジュクジュク部位には適しません。
頭皮には、軟膏やクリームだと髪の毛にくっつき、塗りづらいため基本的にローションタイプを使います。
蒸発は早く、持続性は短いです。
化粧水タイプはスプレーのものもあります。

 

 

塗り薬の剤形はこのようにそれぞれ特徴があります。
我々アトピー患者は医師に言われるがまま薬を使うのではなく、
どの剤形が自分に合っているのかを、考え、医師に伝え、自分に合った薬をつかうべきと私は思います。

 

 

 

補足1
塗り薬は、例えばアトピーでよく使うステロイド剤の
リンデロンVG軟膏0.12%
ですが、0.12%のところを見てもらうと分かるとおり、有効成分は0.12%。つまり10gだったら、そのうち0.012gしか入っていません。
残りの9.988gは薬を安定させたり、使いやすい形にしたりする添加物です。
添加物は一般的に食料品などとは少し違い、医薬品添加物と呼ばれ、薬としての効果を示さないものです。
この9.988gの組成によって、剤形が決まります。

 

補足2
特殊な剤形として、上記以外に比較的新しい
泡状スプレー
というものがあります。(ヒルドイドフォームもこれに該当します)
ローションに近い特徴を持ちますが、噴霧すると細かい泡が出てきます。
通常のスプレーに比べ液だれせず、空気中に飛散しません。
あと使っていて楽しいです(笑)
これらの特徴から、特に夏場を中心に使用率が上がっています。
またお子さんも面白がって、しっかり使ってくれることが多いです。
塗ってあげたいのに嫌がるお子さんへの選択肢の一つになります。

 

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脱ステロイド
脱保湿
保湿剤の種類